【角換わり右玉対策】4四銀型、4四歩型を考え方から解説

右玉

こんにちは。オガワです。今回は角換わり右玉の対策を検討していきます。

この記事ではまず、次の大まかな方針や注意点について解説します。

  1. 4八金型でなく4七銀・5八金型に組む
  2. 目指すべき形は何か

その後、以下の2つの形を検討していきます。

  • 4四銀型
  • 4四歩型

角換わり右玉は藤井聡太先生が八冠制覇を達成した王座戦の第2局で現れたことでも話題になりました。また、アマチュアの将棋でも右玉を得意とする方と対局する機会が割とあります。その際の参考になると思いますので、この記事を参考にぜひご自分でも研究してみてください。

※この記事は筆者独自の研究とプロの将棋、ソフトの評価値などを基に執筆しています。内容はあくまで個人の見解ですので、ご自分でも改めてソフトなどで研究することを推奨します。

他にも角換わりに関する記事を書いているのでぜひご覧ください。

方針・注意点

この章では具体的な手順の検討に入る前に、対角換わり右玉の方針と注意点について解説します。
なお、この記事では右玉側を後手として検討を進めます。

それでは詳しく見ていきましょう。

4八金型でなく4七銀・5八金型に組む

右玉でない角換わりでは下図のような4八金型が主流になっています。

ですが、今回は下図のような4七銀・5八金型を見ていきます。

実際プロの公式戦でもこの形を見ることが多いです。もちろん展開によっては4八金型に組み替えることもありますが、(この記事でもそのような展開が出てきます)まずは4七銀・5八金型で相手の出方を伺うというイメージを持っておくと良いでしょう。

この形のメリットは以下の2つです。

  1. 右玉からの△5五銀を防げる
  2. 桂頭攻めを緩和できる

もちろん最初から5六銀型や4八金型に組んで戦う形もないわけではありませんが、上で述べたように右玉側から動かれる筋を常に気にする展開になる(特に5六銀・4八金型だと△5五銀の筋から△4七銀と放り込まれる展開が嫌)ので、時間の短いアマチュアにとっては4七銀型が有力かなと思います。

目指すべき形、展開は何か

正しい手を指すには個々の局面の最善手を覚えているだけではいけません。それだけでは未知の局面になった時に対応が難しくなります。そのようなことにならないためにはある程度自分の中で目指すべき形や展開をイメージしておく必要があります。

早速いくつかの目指すべき形を見ていきましょう。

8七金型から地下鉄飛車

下のような形です。現代ではこの金冠の形が対右玉でなくとも、たまに出てくるので覚えておくとよいと思います。このように上部に厚い形を組んで▲9八香~▲9九飛のように地下鉄飛車にするのが一つのパターンです。ただしこの形は8八玉の状態で右玉側が飛車先の歩を交換してくることが必要条件としてあります。

6七銀型から地下鉄飛車

上述の8七金型の方が上部に厚いですが、8七金型には必ず組むことができるわけではありません。なので下のような形の地下鉄飛車も覚えておきましょう。

7二玉・6二金の形は端攻めのチャンス

これは目指すべき形というより考え方ですが、右玉側が7二玉・6二金型のときは玉を端から遠ざけるのが難しい(△6一玉は形が悪く、△5二金~△6二玉は二手かかる)ため端攻めが特に有効になります。端攻めとは違いますが、棋聖戦の藤井聡太-佐々木大地で現れた▲9七桂~▲8九飛の構想も7二玉・6二金型の瞬間を狙っているという意味では考え方が共通しています。

右玉側の玉が端から遠ざかったときは右から攻める

右玉側が地下鉄飛車を嫌って端から遠ざかろうとする展開があります。このときに隙ができることがよくあるので、その瞬間に逆の右側から攻めるのが効果的になることが多いです。

次の章からは具体的な手順を解説していきます。

4四銀型

まず4四銀型から見ていきます。これは次に紹介する4四歩型よりも積極的で、右玉側から動いていく展開になることも多い形です。

この章では以下の右玉側が△4四銀と出た図1からの手順を見ていきます。1筋の端歩の付き合いが入っているか、どのタイミングで△4四銀と出るかなどによってこの後の展開は変わってきますが、それら全てをこの記事でカバーするのは難しいので、今回は図1を起点とします。

図1

図1からの手順
▲2四歩△同歩▲同飛(図2)

図2

4四銀型には2筋の歩を切って歩を持ち駒にするのがポイントです。歩を持ち駒にすることによって9筋での端攻めを効果的にする効果などがあります。ただし、この瞬間は飛車の位置が少し悪いという面もあります。▲2四同飛の局面で右玉側には

  1. △5五銀と出て次の△6五歩を狙う
  2. △6五歩と突っかける
  3. △2三歩と収める

という三つの手段が主に考えられるのでそれぞれ見ていきましょう。

図2から△5五銀

図3は図2から△5五銀と出た局面です。次の△6五歩が手厚い攻めなので、どうにかしてこの銀を追い返したいところですが、図3で▲5六歩と突くと、△4六銀▲同銀△1三角という遠く玉を睨む手があって面白くありません。

図3

図3からの手順
▲2九飛△2三歩▲6九飛(図4)

図4

最終手の▲6九飛が△6五歩を防ぐ受けです。図4のようになると右玉側も銀を撤退するしかなくなります。
また、この手順ではいくつか分岐があるので、それについても触れておきます。
まず、△2三歩と受けたところでは飛車先が通ったままですが△6五歩と攻めてくる手もあります。これにはいきなり▲9五歩!と突っかけるのが好手です。以下△同歩▲9三歩△同香▲9二角!と進むと後手の飛車は縦に動けず(動いた瞬間▲2一飛成がある)優勢です。
また、▲6九飛のところでは▲5六歩で良さそうですが、△3八角の筋があるので強く△同銀!と取られる手が気になります。(実際は▲2六角で先手が良いが、これは少し右玉の形が変わると使えないので応用性に欠ける)

図2から△6五歩

図5は図2から△6五歩と突いた局面です。△5五銀よりは穏やかな攻めの一手です。

図5

図5からの手順
▲2九飛△2三歩▲6五歩△同桂▲6九飛△7七桂成▲同桂△6四歩▲6五歩△同歩▲5六桂(図6)

図6

手順中の▲6九飛が銀と桂の交換になって損なようですが、6二の玉を睨む良い手です。図6では相手の玉頭を攻めることができそうで、難しいですが先手ペースです。

図2から△2三歩

図7は図2から△2三歩▲2九飛と進んだ局面です。三つの候補の中で最も穏やかな手で、最も変化が多い手です。なのでいくつか手順の候補を挙げます。

図7

図7から△5三銀

図8は図7から△5三銀と引いた局面です。銀を玉に近づける自然な一手です。

図8

図8からの手順
▲5六角△5五歩▲3四角△2四歩▲4五桂△5四銀直▲2四飛(図9)

図9

▲5六角と打つのが7筋の桂頭と手薄になった右辺を狙う好手です。桂頭を守るため△5五歩と角を追って△2四歩!が▲同飛なら△3三金を狙った好防ですが、▲4五桂を入れて△3三金を消してから▲2四飛と走るのが冷静で先手ペースです。
ちなみに4四銀型で▲5六角と打ってしまうと、△5五銀▲3四角△2四歩(このとき▲4五桂が銀に当たらない!)で後手ペースになります。
また、▲5六角は△5三銀でなく△3三桂にも有効な一手です。(△3三金が消えている)

図7から△7二玉

図10は図7から△7二玉と寄った局面です。これには目指すべき形として紹介した地下鉄飛車を目指すことになります。

図10

図10からの手順
▲5六歩△5三銀▲6八銀△4四歩▲6七銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8一飛▲7七桂△6二玉▲6八玉△5一玉▲4五歩(図11)

図11

少し手数が長いですが、流れとしては地下鉄飛車を狙う先手に対して、右玉側は玉を端から遠ざけようとします。しかし、△5一玉の瞬間に今度は▲4五歩とこちらから仕掛ける手がありました。
このように地下鉄飛車を見せて玉が端から遠ざかった瞬間に今度は逆から攻めるのは、相手の出方によって指し手を変える現代将棋によく見られる考え方なので覚えておきましょう。
実戦では図10からの手順通りに進むことはほとんどないと思いますが、考え方を覚えておけば別の手順になった場合も応用が利きます。

4四歩型

4四歩型は4四銀型よりは穏やかな展開になりやすいです。また、プロの公式戦では上述の4四銀型よりもこちらの4四歩型が多く採用されているイメージがあります。例えば藤井聡太先生と永瀬拓矢先生の王座戦などでも4四歩型が採用されていました。
この章では以下の図12を起点に考えていきます。

図12

4四歩型は右玉側の指し手に変化が多すぎるので、この記事で全てを網羅することは難しいです。なので、ここでは手順の例を2つ紹介します。
共通する考え方としては良いタイミングで▲4五歩の仕掛けを狙うということです。実戦でもこれを念頭に置いて指してみてください。

図12からの手順例①
▲8八玉△7二玉▲4八金△6二金▲5六銀△4二金▲4五歩(図13)

図13

△7二玉と左に玉を寄せる右玉に対して、先手は△4二金の瞬間に▲5六銀~▲4八金~▲4五歩と仕掛けました。このように4四歩型に対しては、5六銀型に構えるのが主導権を握りやすく、おすすめです。

図12からの手順例②
▲8八玉△4三金右▲4五歩△同歩▲1七角△4四銀▲4五桂△3五歩▲4六銀△7二玉▲3五銀(図14)

図14

△4三金右とする手にはいきなり▲4五歩と仕掛ける手が成立します。このような▲4五歩~▲1七角の組み合わせもよく出てくるので覚えておきましょう。

まとめ

角換わり右玉は普通の相腰掛け銀の形とは異なる感覚が必要になるので、苦手とする人が多いです。ですが、今回の記事でいくつか紹介したポイントを身に着ければ、十分に戦うことができます。実戦でもぜひポイントを意識して右玉を倒しましょう!

何か記事の中で気になることや、ここは間違っているんじゃないか?というところなどございましたら遠慮なくコメントをくださると嬉しいです。

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